フランク永井を知るために・08|多様な媒体…配信、CD・DVD、レコード etc.

 フランク永井の曲を聴くとき、配信はもっとも手軽な方法でしょう。かなりの音源が配信されるようになっていますが、配信されていないCD、レコードやカセットでしかリリースされていない曲もまだたくさんあります。

 それぞれの媒体をどう活用するか、最近聴き始めたばかりの私に分かる範囲ですが、まとめてみたいと思います。

この情報は、2024年8月現在のものです。今後、音源の復刻が進めば状況は変わってくるかもしれません。


配信

 配信は多くの音源に手軽に触れられるので、私のような入門者には適した媒体です。Spotify、Apple Musicなどのユーザーはフランクの数百曲にアクセスできますし、YouTubeなら登録していなくても(広告は入りますが)、同様の音源を聴けます。

 配信の弱点は、ブックレットなどの背景的情報がついていないことでしょう。一部は歌詞つきだったり、作詞作曲などのクレジットが分かる場合もありますが、基本的には自分で情報を探す必要があります。

 『懐かしのフランク永井 シングル全集』全10巻が配信されているのは大きいところです。とくに初期はシングル中心のリリースだったこともあり、フランク永井の歌手生活30年を概観することができます。

 フランク永井のディスコグラフィーだけでなく、「参加作品」にも発見があります。『ビクター・トレジャー・アーカイヴス 中村八大ビクター・イヤーズ・セレクション』には、フランクのミニアルバム『抒情組曲 遠い日の歌〜こども風土記』(1962)全5曲が含まれています。

 その他にも、当時のアルバムで入手困難だったものが次々と配信されつつあり、今年に入って『魅惑の低音』シリーズが加わったのも嬉しいところです。現在のところ第1〜5&7集まで出ていますが、オリジナルは第14集まであるので期待が膨らみます。『魅惑の低音 デラックス』(1958/2024)には、フランクの語りを含めて、いままで聴けなかったボーナス・トラックが追加されています。復刻・新音源がリリースしやすいところが、配信の利点でもありますね。



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フランク永井
配信限定アルバム

 『魅惑の低音 デラックス』については、いつもご紹介している文四郎さんの解説がためになります。

「魅惑の低音デラックス」新発売。購入して損はないセリフ入り ▶


CD・DVD

 現在のところ、配信で手に入らない音源を収めたCDには、「LABEL ON DEMAND」の復刻盤と、各種のCD-BOXがあります。

 LABEL ON DEMANDからは現在、百数十枚にのぼるシングルと、14枚のアルバムの復刻版が出ています。アルバムの中で現在配信にかかっていないのは、下記の7枚。ただし『at BELAMI』については、後述のCD-BOX『プレミアム・セレクション』の方が収録曲が断然多く、オススメです。

『フランク永井リサイタル』(1963)
『慕情~「歌と共に10年」第2回フランク永井リサイタルより録音』(1966)
『フランク永井 at RO-ON 第2集』(1967)
『フランク永井 at BELAMI』(1972)
『魅惑のオン・ステージ フランク永井』(1976)
『酒・女・そして・・・』(1978)
『歌手生活30周年記念ライヴ』(1985)

 CD-BOXは、各社から出ていますが、それぞれに収録曲が違います。相当数が重なっているんですが、ちょっとずつ違うという感じです。その中でも特色あるものをご紹介します。

『コンプリート・シングル・コレクション』10CD+1DVD(2016)
 シングルA面全集です。10枚分の音源は配信されていますが、特典DVDには、NHKが所有している映像が28曲収録されています。紅白歌合戦初期の初々しい時代から、歌手としての活躍、成熟をその姿とともに追体験することができます。

『フランク永井 プレミアム・セレクション』6CD(2024)
 新しいCD-BOXです。初CD化されたシングルB面や、『フランク永井 at BELAMI』(1972)のLP版に加えて、カセット版のみの曲を収めた2枚組として復刻しています。京都ベラミでのライブ全体を堪能できるのがすばらしいところです。
(なお、このBOX公式サイト上の「初CD化」の表現ですが、LABEL ON DEMANDで既出の曲はオンデマンドCD-Rのせいか、カウントしていないようです。)

『フランク永井の世界』7CD(2015)
 ユーキャンから出ているBOXです。歌い出しから情熱的な「上海帰りのリル」、ファンキーなアレンジの「紅屋の娘」をはじめ、初CD化曲の含有割合がけっこう高いのが特徴です。

『ステレオによるフランク永井のすべて』5CD(1999)
 このBOXは、ライブ盤『輝ける21年の足跡 フランク永井リサイタル』(1977)2枚組を含んでいるのが特徴です。大きなステージで、豪華な演奏と油の乗ったフランクの軽妙なトークが相乗効果で楽しめます。

『歌と映像で綴る フランク永井ベスト』2CD+1DVD(2019)
 DVDに、ビデオクリップを5曲収録しています。フランクさんのお姿からは70年代と思われますが、歌に込められた思いが伝わってきます。

『フランク永井のすべて 歌声よ永遠に』3CD+1DVD(2009)
 DVDには、ナイトクラブを舞台に、松尾和子と代表曲5曲をデュエットする映像が収録されています。「魅惑のゴールデン・デュエット2」(1981)と同時期のものでしょうか。


 上記のもので、現在デジタル化されている音源はだいたいカバーできると思います。

 映像も、もっと復刻してもらいたいものですね。もともとビッグな歌手でありながら、テレビ出演は抑えめにしておられた方だと思います。細切れの出演よりも、トータルに自分の世界を構築する方が性に合っていたのかもしれません。NHKビッグ・ショーの映像が失われているらしいのは本当に残念です。録画をお持ちの方がもしおられたら、ぜひNHKに教えてあげてください……


レコード・カセット

 実のところ、私はレコードやカセットは入手できていないんです。そんな私に語る資格はないのですが…

 ただ、そんなにフランクが好きなんだったらと、よく行くお店のマスター(私よりふたまわりほど年上でしょうか)にいただいたものがあります。『上海ブルース』(1970)と、『あなたのすべてを』(1985)です。レコード自体は入っていなかったりするんですが、ジャケットだけでも貴重なものです。

 『上海ブルース』のジャケ写は、白いスーツが決まってますね。配信だとこの正方形しか見えませんが、実はレコードは見開きになっておりまして、開くと全身像を拝むことができるんです(2面で伸身が収まるわけもなく、ちゃんと腰掛けた姿ですよ)。しかも開いた中にはブックレットが貼付され、歌詞だけでなく、はじめて見る写真や解説に触れることができます。日本のものづくりが本当にていねいだったころのものですね。

 本物のファンの方は、こうしたレコードやカセット、その他さまざまなフランク関連の品々を大変な苦労をして収集されています。その中に、なかなか入手困難な音源が含まれているんですね。カセット版のみに追加された曲もあるとのことで、大変奥の深い世界です。

 こうしたレア音源のデジタル化を進めてもらいたいというのは、大変虫のいい希望ではあるのですが、未来にフランク永井の芸術を残していく上では大切な仕事だと思います。ジャケ写やブックレットも、美術館の図録のようにまとめたら、いい本になると思うんですが…… このところ、数ヶ月おきに新しいアルバムが配信されているのは嬉しいことで、そのたびに私の生活を幸せにしてくれています。



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