フランク永井を知るために・04|ライブ盤『Frank Nagai at BELAMI』(1972)京都ベラミの実況録音
フランク永井のライブには、レコードとはまた違った素晴らしさがあります。
ライブ盤が何枚も出ていますが、まだ配信にはなっていません。
私の一番のオススメはこれ! 『Frank Nagai at BELAMI』(1972)です。
単体CDとしても入手できますが、どうせなら、このたび新しくリリースされた『フランク永井 プレミアム・セレクション』CD-BOX(2024)を。同ライブ・アルバムの拡張版が2枚組になって収録されており、倍楽しめます。
京都三条にあった有名クラブ「BELAMI」でのライブです。他のライブと違うのは……
お客さんとの距離も近く、トークにも夜の雰囲気があり、ワイルドな魅力を増しつつも、全編に流れるフランク本来の端正さ・上品さに支えられた、唯一無二の雰囲気なんです。フランク永井のライブは、曲間のおしゃべりも魅力です。自在なトークで観客の心を魅了しながら、歌の世界に引き込んでいきます。『at BELAMI』では観客も酔ってるし、昭和の夜のオトナ感もナンダカですが、クラブ全体が一つとなって楽しさと優しさに包まれる、そんなライブ体験が伝わってきます。
レコードとはまた違った歌声も魅力です。「西銀座駅前」は始まりの「…ぃYo!」、「16トン」ではレコード以上に渋い低音を効かせた英語で、いつにも増してロック感があります。レコードで聴くフランク永井には端正な完璧主義者とか、繊細な傷つきやすさの底にある優しさといった印象があったのですが、ライブでは楽しさや、それこそ「フランク」な親しさとユーモア、野性味、観客を魅了しつくす自信、そしてやっぱり優しい、もてなしの心が加わって、全方位から楽しめるエンターテインメントとなっています。
「東京ナイト・クラブ」(『プレミアム・セレクション』版のみ収録)では、観客をステージに上げて一緒に歌うことが多かったようですが、この『at BELAMI』で登場するお客の「リカちゃん」は圧巻です。かつてこれほどの酔っ払いの歌を収録したレコードがあっただろうかという仕上がりなんですが、それがまたいい感じに正直な酔いっぷりで、人のよさが伝わってきます(フランクさんも「こんないい人、は〰じめて」と言われていました)。フランクさんがリカちゃんにモテてるのも微笑ましく、丁々発止のおしゃべりが場を盛り上げて、二人でとても楽しい時間をつくっていました。半世紀以上を経て、今年再発されたわけですが、リカちゃん、日本のどこかで聴いていらっしゃるでしょうか。
モテ感と言えば、ジャケ写もなかなかいいですよね。伏し目がちなアングルって珍しいのですが、ポマードで決めた髪とフィンガースナップがあいまって、フランク永井のダンディーな魅力が伝わってくる写真だと思います。
私はまず、LABEL ON DEMANDから出ているバージョンを買ったのですが、これは当時のレコードを復刻した1枚組のCDです。先述しましたが、今回出た『プレミアム・セレクション』は、2枚組に相当する分量があり、曲数も倍になっています。こちらは当時のカセット版の復刻なんだそうです。それだけ長い時間、フランクの世界を楽しめるわけですね。件の問題作、リカちゃん入りの「東京ナイト・クラブ」も、こちらのみの収録です。
それにしても、本当にライブに行ってみたかったなあ…… その姿、お話、存在感を通して、お人柄を感じることができただろうし、ますます夢中になって大変なことになってたでしょうね。
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