フランク永井を知るために・02|シティ・ポップの傑作アルバム『マホガニーのカウンター』(1983)

 フランク永井を初めて聴く人に、ぜひお薦めしたいのがこのアルバム、『マホガニーのカウンター』(1983)です。全編が今で言うところの「シティ・ポップ」。フランクの現代的な感覚に触れられる一枚です。



Amazon Music
フランク永井 マホガニーのカウンター



 前年の「WOMAN」(1982)は、AB面とも山下達郎作詞・作曲で、新境地を切り拓きました。田中裕子出演のCM(サントリー Mild Vodka 樹氷)でも知られています。

 この曲に興味をもった人は同年同題のアルバム『WOMAN』(1982)を聴いてもいいのですが……

実は同系統の曲が入っているわけではなく、アルバム全体としては歌謡曲のカバー集となっています。


 これをさらにシティ・ポップの完成形へと仕上げたのが、当作『マホガニーのカウンター』です。「WOMAN」AB面の山下達郎曲も再録しつつ、アルバムとしての統一感はこちらで味わえます。というわけで、山下達郎「WOMAN」が気に入った方は、実はこっちの方を聴くとさらに楽しめるわけです。

 表題作「マホガニーのカウンター」は小椋佳作曲。フランクお得意の英語を織り交ぜながら、ファンキーなベースに乗せて甘くせつない思い出を歌っています。長い年月に傷跡も刻まれながら、なお愛着と風格を増すマホガニーのカウンターは、80年代フランク永井の魅力の深まりを象徴するものと言えるでしょう。

 続く「愛の影」は星勝作曲。バラードながらチョッパー(スラップ)ベースが大活躍します。同時期の安全地帯をも思わせる全開のせつなさに、若干のニューウェーブ感が加わって、ある種思春期的な憂鬱感も漂いながら、同時に歳月の重みも兼ね備えている名曲です。

 A面は小椋佳・星勝、B面に山下達郎作曲のシングルと、来生たかお作曲のファンキーな「スローナイト」、そして「せめて今夜」「Goodbye Day」を収録。4人の作曲家を80年代の旬な音で楽しめます。

 最先端の音と、異なる個性の作曲家たちを集めつつ、それを一つの完成された作品としているのが、フランク永井の優しい声であり、内面的な精神性なんだと思います。

コメント

このブログの人気の投稿

フランク永井を知るために|その多彩な音楽性

フランク永井を知るために・08|多様な媒体…配信、CD・DVD、レコード etc.

フランク永井を知るために・04|ライブ盤『Frank Nagai at BELAMI』(1972)京都ベラミの実況録音