フランク永井を知るために・03|『フランク、ジャズを歌う』 ジャズ・シンガーとしてのフランク永井
フランク永井は、進駐軍のジャズ・シンガーとして出発しました。30年のキャリアを通して歌ってきたジャズ、スタンダード曲のかなりの部分を、このアルバムで楽しむことができます。
このアルバムはデビュー曲「恋人よ我に帰れ」(Lover Come Back to Me; 1955)から始まりますが、フランク永井はその最初期から、声だけ聴けばアメリカの大歌手かと思いますよね。フランクさんは戦前生まれにもかかわらず……
進駐軍の仕事をしていた経験から英語が堪能で、それも私にとっては憧れポイントの一つです。歌っているのはスタンダードですから、懐かしい曲だけれども、古びない。声はもちろん、演奏も豪華です。私がカフェを開いたら、このアルバムをかけとくと、いい雰囲気のお店になるんじゃないでしょうか。今も変わらず、です。
「夜のストレンジャー」(Strangers in the Night; 1967)は、フランク・シナトラのヒット曲(1966)を翌年のアルバム『恋心 フランク永井とともに』でカバーしたものです。フランク永井の方が、断然甘くて優しい雰囲気ですね。洋風な洗練の中にも、和の懐かしさを併せ持っているのが、フランク永井の他にない魅力かもしれません。
全体的には英語なんですが、Disc 1の序盤は日本語・英語混じりの曲になっています。フランクが歌うと混じっていても全然違和感がないですね。どちらの発音もとてもていねいで、一貫したスタイルがあります。
デビュー曲から始まって、歌手生活30年の初期と後期の曲が収録されているのですが、全体の流れに何の違和感もないところもすごいです。時代によって歌い方に若干の変遷もあるのですが、最初から完成された存在であることも感じられます。
このアルバム、ジャケ写もなかなかオシャレでかっこいいですね。年齢を重ねたからこその味があります。若いころは映画に多数出演されてましたし、俳優業も復活するとよかったんじゃないでしょうか。この風貌そのままで、もうちょっと後の「トレンディ・ドラマ」にも出てたら、「カワイイおじさん」的なブームが起きてたかもしれませんね。役柄はやっぱり、誰かを応援したり、支えたり、ときに名ゼリフを決めたり……そのあたりは、若い頃と変わらないんだろうと思います。
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